【行政書士試験】科目別勉強法 ~行政法①(主要三法)~

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(この記事は2020年2月24日に更新されました)

こんにちは。
ショシ太郎です。

前回の憲法に引き続き、今回は行政法の勉強法について書いていきます。

行政法という一つの分野ではありますが、実際は行政手続法、行政不服審査法、行政訴訟法、国家賠償法、地方自治法等の法律で構成されています。

試験での出題は択一19問、多肢選択が2問、記述1問の計112点で構成されています。
まさに行政試験の砦で、ここを攻略できなければ合格は不可能でしょう。

この分野は法律ごとに勉強法が変わってくるので一つ一つ説明していきます。
なお、ボリュームが大きくなってしまうので今回の記事では主要どころの行政手続法、行政審査法、行政訴訟法だけにしておきます。
残りは後日公開します。

行政手続法

どんな法律?

行政手続法がどんな法律かというのは、第一条を読むと分かります。

この法律は、処分行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的とする。―行政手続法第一条一項

行政手続法は、以下の4つの手続について共通するルールを作って不公平が生じないようにしようということです。

・処分
・行政指導
・届出
・命令等

さらにこの4つの手続の定義も条文で規定されています。
試験ではこの定義をちょこっと変えたり入れ替えたりした問題が出題されます。

試験でよく狙われるポイント

私が受験生だったころ、よく狙われるな~と感じていたのは以下の三つの論点です。

  • 義務と努力義務
    行政手続法には二種類の手続きがあります。それは、行政庁が「必ずしなければならない」手続と、「努めなければならない」手続です。
    前者を義務と言い、後者を努力義務と言います。
    努力義務は野暮な人が言う「行けたら行く」をイメージしておくとよいです。(笑)
    試験ではある手続が義務にあたるのか、それとも努力義務なのかを問う問題が出題されます。

    以下の条文を見てみましょう。

行政庁は、審査基準を定めるものとする。―同法第五条一項

行政庁は、処分基準を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならない。―同法第十二条一項

第五条が義務で、第十二条が努力義務を定めた条文です。
このような条文が大量にあるので、末尾までしっかり条文を読んでおく必要があります。
中途半端は読み込みだと、「処分基準を定めなければならない」と出題されたときにどっちだっけ・・・という現象に必ず陥ります。

  • 聴聞と弁明の違い
    私がよく惑わされていたのが「聴聞」と「弁明」の比較問題です。
    例えば、参加人制度(第十七条)や文書等の閲覧制度(第十八条)です。
    これは聴聞でしか行われない手続ですが、問題文で「利害関係を有する者は弁明に参加することができる」と書かれると迷ってしまいがちです。
  • 適用除外
    私は判例六法に過去問や模試等で出題された条文を正の字でカウントしていたのですが、行政手続法において一番カウントが多かったのが第三条三項でした。

第一項各号及び前項各号に掲げるもののほか、地方公共団体の機関がする処分(その根拠となる条文が条例又は規則に置かれているものに限る。)及び行政指導地方公共団体の機関に対する届出(前条第七号の通知の根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)並びに地方公共団体の機関が命令等を定める行為については、次章から第六章までの規定は、適用しない。―同法第三条三号

この条文がとにかく出題されるんです。。。
以下の4つの手続については、行政手続法(二章から六章)が適用されないというものです。

・地方公共団体の機関がする処分(その根拠となる条文が条例又は規則に置かれているものに限る)
・地方公共団体の機関がする行政指導
・地方公共団体の機関に対する届出(前条第七号の通知の根拠となる規定が条例位又は規則に置かれているものに限る。)
・地方公共団体の機関が命令等を定める行為

この条文で問題を作れと言われるといくらでも作れそうな気がします。
それほど出題しがいのある条文だと思います。
だからこそ何度も出題されるのです。

勉強方法

行政手続法の勉強法は、とにかく条文を覚えることです。
上記で紹介した、よく狙われるポイントも条文問題です。
第一条から第四六条まで全て暗記しろとまでは言いませんが、偽条文が出題されたときに自信をもって切れるレベルまでは読み込みが必要です。

判例と条文学習の比率で言うと、1:9くらいの配分でも良いです。
行政手続法での出題される判例というと行政指導が主要どころかなと思います。

私は過去問をひたすら回し、間違えた問題や迷った問題はその都度条文をチェックするようにしていました。

義務と努力義務、聴聞と弁明といった比較問題が多いので自分で分かりやすい表を作っておくことも有効です。

行政不服審査法

どんな法律?

行政不服審査法も一条を読めば概要がつかめます。

この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関し、国民が簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申し立てをすることができるための制度を定めることにより、国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適切な運営を確保することを目的とする。ー行政不服審査法第一条一項

行政手続法は、処分の際にどのような手続を取るのかという内容でしたが、行政不服審査法では、処分が行われた後の国民の救済措置について定めています。

ところで、さきほどの行政手続法の条文と構造が似ていることにお気づきでしょうか。特に色を付けている部分が要注意です。

手続法…公正の確保と透明性
審査法…簡易迅速かつ公正な手続

手続法…保護
審査法…救済

試験では、行政不服審査法について述べたものを選べという問題に対し、上記のキーワードが入れ替わった肢が出題されることがあります。

試験でよく狙われるポイント

  • 審理手続
    処分庁から国民に処分が下されてから、審査請求を経て審査庁が裁決するまでにどのような手続きがどのような順番で行われるのか時系列で覚えておきましょう。
    まずは一連の流れをざっと確認し、そのあとに個々の論点に掘り下げていくと理解しやすいと思います。

    例えば、審査請求がされると審理員が選任されますが、その審査員になることができない要件はなにか、審査庁は裁決の前に行政不服審査会に諮問しますが、審査員は何名で任期は何年、管轄はどこなのか、等です。
    一つ一つのポイントを覚えようとすると量が多くて大変なので流れの中で知識を紐づけて覚えたり、時系列を意識したりすると良いです。

    もう一つ、混乱しやすいのが弁明書と反論書です。提出するのは誰か、それは義務なのかどうか等が出題されます。条文で確認してみましょう。

審理員は、相当の期間を定めて、処分庁等に対し、弁明書の提出を求めるものとする。―第二九条二項

審査請求人は、前条第五項の規定により送付された弁明書に記載された事項に対する反論を記載した書面を提出することができる。この場面において、審理員が、反論書を提出すべき相当の期間を定めたときは、その期間内にこれを提出しなければならない。―第二十条一項

弁明書は処分庁等が提出する書類で、必ず提出しなければなりません。
一方で、反論書は審査請求人が提出できる書類で、原則任意です。
ごっちゃになりやすいのですが、私の覚え方はこうです。

「弁明書は、処分庁の処分に対して文句がつけられているので処分庁がそれを”弁明”するための書類で、反論書は、弁明を聞いた請求人がそれはおかしいだろと”反論”するための書類」
「弁明書は提出しないと審査のしようがないので義務(双方の言い分が必要)、反論書は請求人に異論がなければ出す必要が無いので任意」

多少強引かもしれませんが、自分なりの解釈を持つことは大切です。

  • 執行停止(行政訴訟法との比較)
    ここも多くの受験生が混乱に陥ってしまうポイントです。

    どのような審査庁が、どのような措置を行えるのか、きっかけは審査請求人の申立てなのか審査庁の職権なのか、執行停止が認められる要件は何か、その例外はあるのか・・・等を全て覚えておかなければならない項目が多くいろんなパターンの問題が出題されます。

    答えは全て条文(二五条)に書いてありますが、条文を読むだけでは整理しづらいところなので表にまとめるなりフローチャートにまとめるなりする必要があるかと思います。

    さらに、執行停止は行政訴訟法にも定められおり、比較問題も出題されます。
    そのため執行停止の条文を読む際は、審査法と訴訟法を相互に確認する癖をつけておくと良いです。

勉強方法

行政手続法と同じで、出題されるのは9割条文問題で判例問題はほとんど出題されないでしょう。
勉強方法は手続法と同じで過去問をメインに据え条文を確認していくスタイルが王道かと思います。
ただし、手続法よりも条文の構造が複雑で理解しづらいので読み込みに時間をかけるべきです。
その際は、主語に意識して読み込むようにしてください。
その手続きを要求(執行)できるのは審査請求人、参加人、利害関係人、処分庁、審査庁(どんな審査庁)のうちどこになるのかという問題がよく出題されるからです。

行政訴訟法

行政訴訟法は、手続法や審査法よりも難易度が高く苦手意識を持っている方が多いです。
条文も複雑ですし、訴訟法というだけあって、判例の数が多いです。

絶対覚えたい!三大頻出判例

行政訴訟法を攻略するためには、条文を精読するのはもちろんですが、それだけでは足りません。
この科目は、膨大な判例を覚える必要があります。

行政処分の取消訴訟を提起するためには、処分性原告適格訴えの利益があるかどうかという要件を満たす必要があります。(その他の要件として被告適格や出訴期間もあります。)

この3つの要件を満たすかどうかについて争われた判例が試験では最頻出といっても過言ではなく、私は行政訴訟法の三大頻出判例と名付けています。
一つずつ見ていきましょう。

  • 処分性
    まず、取消しの対象となる行為が「処分性」を有していないことには始まりません。(行政”処分”の取消訴訟だから)
    その処分性は、以下の条文で定義されています。

この法律において、「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為の取消しを求める訴訟をいう。―行政訴訟法第三条二項

処分性とは、青色でマーキングした「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」のことです。
ここに該当しなければ取消訴訟を提起できないのです。
しかし、この条文だけでは、どんなケースが処分に該当するのか全く分かりません。
だから一つ一つ裁判で確かめるしかないのです。

例えば、以下の訴訟が処分性を争った事案になります。
・用途地域の指定が処分にあたるか
・二項道路の指定が処分にあたるか

なお、判例の攻略法は三テーマまとめて後記します。

  • 原告適格
    簡単に言うと、訴訟を提起できる者の要件のことです。
    詳しくは以下の条文で定義づけされています。

処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴えは、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなった後においてもなお処分又は裁決の取消しによって回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。―第九条一項

上記の条文通り、原告適格は法律上の利益を有する者のみに認められます。
これを判断するにおいては、法令の趣旨及び目的や、考慮されるべき利益の内容及び性質等が考慮されますが、結局のところ個々の事例で判断するといったところです。

  • 訴えの利益
    先ほどの第九条の括弧書き内に定義が書かれています。
    ”処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなった後においてもなお処分又は裁決の取消しによって回復すべき法律上の利益を有する者”

    難しいことが書かれていますが、訴えの利益が否定されれば、「処分は終わったから取消訴訟を提起しても意味ないよね」ということになります。
    これも個々の事案によって判断されているので、判例を覚える必要があります。

三大頻出判例の攻略法

この三大頻出テーマは、判例の数が膨大で全て覚えるのはなかなか大変ですが、判決文全てを読み込む必要はありません。
以下の三つのポイントを押さえれば効率的な学習ができると思います。

  1. 表にまとめる
    処分性、原告適格、訴えの利益の判例をまとめた一覧表を作ることです。
    イメージですが、原告適格の表を作るとこんな感じになります。(〇が原告適格アリ)
    飛行機騒音により著しい障害を受ける飛行場周辺住民
    風俗営業の許可につき風俗営業の制限地域に居住する住民×
    墓地の経営許可につき周辺地域に居住する者×

    予備校に入っている方はこのような一覧表を配布されるかと思いますが、私が使っていたフォーサイトにはこれがなかったので、辰巳の無料講座で手に入れた資料をテキストに張り付けて繰り返し目を通していました。
    その他にも、市販模試のおまけページに表が載っていることがあるので独学の受験生はチェックしてみてください。

    試験では、単純に処分性があるかないか、原告適格があるかないか、訴えの利益があるかないかのYesNo問題がよく出題されます。
    そのような問題を見たときに、この一覧表がすぐに思い出せるように日頃から目を通しておきましょう。

  2. 少数派を覚える
    判例の数が膨大なので、全て覚えようとすると大変です。
    なので、少数派の判例を徹底的に頭に叩き込むというやり方も効率的です。
    例えば、訴えの利益は裁判では否定されたケースの方が多いので、あえて肯定されたものだけを覚えるという具合です。
    (土地改良工事終了後の土地改良事業認可処分の取消訴訟の訴えの利益、公文書非公開決定の取消訴訟の訴えの利益等)
    実際、試験に出題される確率が高いのは少数派の判例なので対策としては有効かと思います。
  3. 判例六法の判旨を覚える
    先ほど、判決文全てを読み込む必要はないと書きましたが、最低限の判旨は読んでおく必要があります。
    その最低限というのが、判例六法に記載されている判旨です。
    ①で書いたYesNo問題が出題されるのはもちろんですが、最近はさらに一歩踏み込んで、なぜYesなのかを問う問題も出題されます。
    判例六法の判旨を読み込んでおけばその問題には確実に対応できます。
    逆にそれ以上の対策は不要です。例えば、わざわざ判例集を買って読み込む必要はありません。時間がもったいないです。

訴訟法まとめ

以上のように、行政訴訟法では手続法・審査法と打って変わって判例を覚えなければなりません。
かといって条文をおざなりにすることはできず、非常に難易度の高い科目です。
勉強の意識としては条文:判例=5:5くらいでもいいかもしれません。

今回は判例をメインに解説しましたが、抗告訴訟の種類や執行停止などの重要テーマは条文問題に分類されるため、手続法や審査法のように条文を精読することを怠らないようにしてください。

最後に

今回は、行政手続法、行政不服審査法、行政訴訟法の勉強法について書きました。
繰り返しになりますが、手続法・審査法は条文メインで訴訟法は条文&判例の勉強が必要です。
行政法は試験科目の中で最も配点が高く、点を稼ぎやすい分野なので合格したければここは落とせません。
択一であれば19問中16問以上は欲しいところです。

次回は残りのマイナー分野について書いていきます。

ショシ太郎